ノンフィクション

祖父倫 2

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1992年9月10日
その日佐藤は昨夜の超人気メーカー代表との会合を以って、大阪に飛んでいた。
株式会社イブ代表の平田は、佐藤の掲げるメーカー主体の業界団体構想に賛意を表していた。
佐藤は、自信ありげに西の雄、アースソフトの田上にいう「イブ社もその必要性に同意されているし、御社さえ賛同いただければ、事はおおかた成功したようなものです。いかがですか?」
田上、「・・・・・・」
佐藤、「このままメーカーが今の事態を放置すれば、流通の取り扱い、店舗への陳列が難しくなるかもしれない。いや、もっと酷い事になりかねない。我々のビジネスが世の中から抹殺されかねない」
田上、「・・・・・・」
佐藤、「田上さん、美少女ゲームがなくなるかもしれないんですよ」
田上は、ピックとしたかに見えた。
田上、「イブ社がいつまでもランキングで一番というわけではないですよ」
田上の言葉に佐藤は愕然とした。
田上は続ける「うちはうちですよ。イブが賛成したからといってうちが賛成するとは限らない。そもそも当社はわが道を行くという主義ですから・・・」
佐藤にとって、話の次元の違いを突くことは容易いことであったが、それよりも根深い何かを感じ取って、それに佐藤は戸惑っていた。
田上の話を聞いている内に、自分が今やろうとしていることが如何に難しいことか、佐藤はその微妙なニュアンスを捉え始めていた。
そしてそれは、一歩間違えば、人気商売をしている佐藤の会社のクリエイター達の日々の努力を台無しにし兼ねないことでもあった。

ゲームが好きでこの業界に入った佐藤にとって、イブもアースソフトも1ゲーマーとしてファンでこそあれ、ライバルという競争意識はさほどなかったのである。

ABSやアクリルなど樹脂を扱う貿易会社を営んでいた佐藤は、月に数度のコンテナの入港以外にそれほど忙しいこともなく、暇な時間を自ずと当時流行し始めていたパソコンに費やしていた。
そんな中からプログラムに目覚め、たまたま自らがプログラミングしたグラフィックツールが、当時のNEC9801用として爆発的に売れ、ソフトハウスを設立するに至った。
後に貿易会社も売ってしまった。
他人の評価はともかく、絵が描け、シナリオが書ければ、イブ社やアースソフト同様に美少女ゲームを作っていたに違いなかった。
ゲームが好きで、戦国モノや中国の古典を題材にした有名SLGなども寝る時間を惜しんでプレイに没頭していた。
そんなわけで起業は早くてもイブやアースソフトよりも少し遅れて、美少女ゲームの制作に参入した佐藤にとって両社は一種の憧れであり、まして業界の施策について両社の著名クりエイターと語り合うことは、大げさにいえばこの上ない誉なのである。

東京に戻った佐藤は、田上の意向を平田に伝えることになった。
1回目平田に会った時は、パッケージ組み立て業者であったEDCの曽根の計らいで、新宿のとある割烹料理店で待ち合わせることになったのだが、平田を40分近く待たせ、もう一歩のところで会談は破談になるところであった。
それもあり、今夜は席を自分で予約し、15分早めに待ち合わせの店に入っていた。
ほどなく平田が姿を見せる。こぎれいな身なりに端正な面立ちは、歌舞伎町辺りで見かけるならば、一流ホストに見違えられるほどであった
平田、「じゃあ、アースソフトは自分で審査してやると云うんですか?流通が認めるはずないじゃあないですか?」
平田は声を荒げ、アースソフト田上の見解を説明する佐藤に一つ一つ食ってかかった。
佐藤、「私や平田さんとは違い、彼は代表ではなく、クリエイターですから、そうやりたいということで、やるということではないと思います。今回の件はクリエイターなら誰でも一様の反発はするでしょう」
平田、「では、アースソフトとしては?」
佐藤、「アースソフト製品を独占販売している問屋TSKが、このままじゃあ困ると思いますから、その辺がアースソフトを説得するのではないですか?アースソフトの白崎社長もアホじゃあないでしょう」
佐藤には、それなりの目算があった。ひどい反発をした田上もビジネスともなれば白崎社長の意向を尊重するはずである。
アースソフトの白崎は自ら、一般ゲームやツールなどを作ることをやっていたが全く振るわず、後に入社してきた田上とその学友の長谷部の立ち上げた社内ブランドであるアースが大人気になってから、ここをビジネスの中心に置いていた。
その中心ビジネスが警察の厄介になったりすることを望むはずがないのである。
ましてや白崎はライオンズクラブの会員でもあった。

佐藤には自信があった。
しかし、引っかかったのはクリエイター独特のライバル心である。
この2社を外して業界組織はありえない
創立時には初代役員に据えることが後々の業界内での組織安定に繋がるはずである。

こうして、佐藤は創立時役員候補を説得して回っていった。
郭と約束した日は刻々と迫っている。



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